問題
問90
テレワークの導入に関する法務上の注意点として、適切なものをすべて挙げたものはどれか。
- a. 労働時間の管理
- b. 労働条件の明示
- c. 情報セキュリティ対策
- d. 従業員の評価制度
- a, b, c, d
- a, b, c
- b, c, d
- a, d
正解
正解は「ア」です。
解説
テレワーク(リモートワーク)の導入は、従業員の働き方の多様化を促進し、生産性向上にもつながる一方で、法務上および運用上の様々な注意点があります。
- a. 労働時間の管理:
テレワークでは、従業員が自宅などで働くため、労働時間の実態を把握しにくくなることがあります。労働基準法に基づき、適切な労働時間の把握、休憩時間の付与、時間外労働の管理(例えば、36協定の範囲内であるかなど )が必要です。勤怠管理システムや業務日報の提出などを活用し、適正な労働時間管理を行う必要があります。 - b. 労働条件の明示:
テレワーク制度を導入する際には、テレワーク時の就業場所、業務内容、労働時間、費用負担(通信費や電気代など)、人事評価制度などについて、就業規則を改定するか、別途テレワーク規程を設けて明確に労働条件を明示する必要があります。これは労働契約法上の義務です。 - c. 情報セキュリティ対策:
テレワーク環境では、会社の情報資産が自宅のネットワークや個人のPCなど、社内とは異なる環境で扱われることになります。そのため、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクが高まります。VPN(仮想プライベートネットワーク)の利用、セキュリティソフトの導入、多要素認証の義務化、従業員へのセキュリティ教育など、厳格な情報セキュリティ対策を講じる必要があります。 - d. 従業員の評価制度:
テレワークでは、上司が従業員の業務プロセスを直接見ることが難しくなるため、従来のオフィス勤務を前提とした評価制度では不公平感が生じる可能性があります。成果主義や目標管理制度(MBO)を導入するなど、テレワークの実態に合わせた公平な評価制度を再構築することが重要です。
以上のことから、a、b、c、dのすべてがテレワーク導入に関する適切な注意点であると言えます。
イ(a, b, c):
a、b、cは適切ですが、dの「従業員の評価制度」の見直しも、テレワークにおける重要な法務上・運用上の注意点です。
ウ(b, c, d):
b、c、dは適切ですが、aの「労働時間の管理」は、労働基準法に則ったテレワーク運用において特に注意すべき点です。
エ(a, d):
aとdは適切ですが、bの「労働条件の明示」やcの「情報セキュリティ対策」もテレワーク導入において非常に重要な注意点です。
解法のポイント
テレワーク導入は単に働く場所を変えるだけでなく、労働時間管理、労働条件、情報セキュリティ、人事評価など、幅広い側面での法務上・運用上の見直しが必要となる点を理解することがポイントです。特に、労働基準法や情報セキュリティに関する法令遵守の視点は重要です。これらの注意点を総合的に考慮し、適切に対応することで、テレワークのメリットを最大限に享受しつつ、リスクを最小限に抑えることができます。
用語補足
テレワーク:
情報通信技術(ICT)を活用して、オフィス以外の場所(自宅、サテライトオフィス、カフェなど)で働く勤務形態のことです。例として、自宅のパソコンから会社のシステムにアクセスして業務を行ったり、ウェブ会議ツールを使って遠隔地の同僚と打ち合わせをしたりする働き方がこれに当たります。
労働時間の管理:
労働基準法に基づき、従業員が実際に働いた時間を正確に把握し、休憩時間の付与や時間外労働の有無などを適切に管理することです。テレワークでは、タイムカードがないため、勤怠管理システムや業務報告によって時間を記録し、過重労働にならないよう注意する必要があります。
情報セキュリティ対策:
企業が保有する情報資産(顧客データ、機密情報など)を、漏洩、改ざん、破壊、不正アクセスなどから保護するための仕組みや活動全般を指します。例として、パソコンにウイルス対策ソフトを入れる、複雑なパスワードを設定する、重要なデータは暗号化するなどが挙げられます。
36協定(サブロク協定):
労働基準法第36条に基づく、労働者と使用者の間で締結される協定のことで、法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間)を超えて労働させたり、法定休日に労働させたりする場合に必要となります。これにより、企業は従業員に合法的に残業や休日労働をさせることができますが、時間の上限が定められています。


